[Friendship]
「よお。もう整備は終わったのかよ?」
格納庫でバスターが熱いブラックコーヒーを口にしていたとき、ガイが声をかけてきた。バスターはカップから唇を離し、その問いに悪戯っぽい笑みを浮かべて答えた。
「ああ。レアナも終わって、今はクリエイタの作業の手伝いをしてるみたいだ。あとはお前だけだぜ、ガイさんよ」
シルバーガン3号機を破損させてしまったことでテンガイ艦長と父親である五十嵐長官に絞られていたガイは、多少ムッとした様子で言葉を返した。
「あー!?なんだよ、その言い方は」
「怒るなよ。冗談も入ってるんだしよ」
バスターはガイの様子を意に介せず、再びコーヒーのカップに口をつけた。ガイはまだ納得のいかないような表情だったが、自分の機体である3号機の修理と整備のために3号機のハッチを開くと同時に、機体の破損部分を見渡した。
「……しっかし、こりゃクリエイタにでも手伝ってもらわなきゃ明日のテストには間に合わねえなあ」
「俺でよけりゃ手伝ってやろうか?借りひとつぶんになるけどな」
コーヒーを飲み終えたバスターは、先ほどと同じ悪戯めいた表情でガイに言葉をかけた。
「お前なー、同僚がこうして困ってるんだから、無償で手伝ってやろうって気持ちにならねえのかよ?まったくよお」
「あいにく、無償で奉仕するボランティア精神は持ち合わせてないんでね」
「へえー、そうかい?その割にはレアナの機体の整備はよく黙って手伝ってやっている気がするけどなー」
「ななな、何言い出すんだよ!あれは、あいつがあんまり子供っぽいから……」
顔を真っ赤にして、バスターは慌てふためいた口調で反論した。その様子に、ガイは面白がって言葉を続けた。
「ま、レアナもお前のことは慕ってるみたいだしなー。その点、俺様は不利だよなあ。お前と同じ男ってだけでこんなに差がついちまうんだから」
「だから!レアナのことは別に……!」
「そう照れるなって。バスターさんよ」
ガイは笑いをもらし、バスターの様子をますます面白がっていた。バスターは返す言葉もなく、ただただ赤面するばかりだった。
「……あいつはなんだか放っとけないんだよ。だからよ……」
「その気持ちはわかるぜ。確かにレアナは俺より年上とは思えないしな」
「おい……条件付きだけど……手伝ってやってもいいぜ?」
バスターは赤面しっぱなしだったが、ふと顔を上げてガイに言葉をかけた。
「なんだよ?条件って?」
いぶかしげに問うガイに対し、バスターは普段の冷静さを幾ばくか取り戻して答えた。
「今の会話、レアナにもらさないって条件だ」
「なんだよ?そんなに照れくさいのかよ?」
「そういう訳じゃね……まあ、正直に言えばそうだよ!……どうだ?」
「別にそれぐらいの条件だったらいいぜ。早く修理しちまいたいしな」
「そうか。じゃあ、交渉成立だ。さっさと修理に入ろうぜ」
バスターは腰を上げ、ガイが立っている3号機の傍まで歩みよってきた。ガイが一足先に修理箇所によじ登ると、ちょうどレアナが格納庫に入ってきた。
「あれえ?ガイ、やっとお説教終わったんだね。あたしも手伝おうか?」
「おう、2人も手伝いがいてくれれば楽勝だぜ。その申しこみ、喜んで受けて立つぜ!」
「おい、ガイ……」
ガイの傍に遅れてよじ登ってきたバスターは、レアナに聞こえないような小声で話しかけてきた。
「さっきの条件、絶対守れよ!分かってるだろうな!?」
「おう!男の約束に二言はないぜ!」
ガイはどんと胸を張った。ガイの言葉に、レアナは首をかしげて問うた。
「ねえねえ、男の約束ってなに?」
「なんでもねえ!なんでもねえよ!それより、お前も早く手伝ってくれよな」
バスターは慌てた口調で返答し、その様をガイは面白げに見物していた。こいつ、最初に思っていたよりいい奴だよな―――西暦2520年の宇宙空間でのフライトテストの合間の、出来事のひとつだった。
あとがき
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