食事療法のポイント

1)蛋白質の制限がもっとも大切

三代栄養素のうち、炭水化物や脂肪は体内でエネルギーとして燃やされると二酸化炭素と水になって息や汗となって排泄されますが、蛋白質は分解されるとほとんどが窒素化合物となって尿の中へしか排出できません。窒素化合物の中で最も多いのは尿素というものですが,その他にクレアチニン,尿酸,アミノ酸,アンモニアなどがあります.

蛋白質の燃えかすである窒素化合物は腎臓からしか体外へ出すことができませんので、蛋白質を多くとると腎臓に負担をかけ、糸球体や尿細管といった腎臓の細胞を自滅させてしまいます。

さらに腎機能が悪化すると血液の中に窒素化合物がどんどんたまり,高窒素血症が高度になると吐き気,嘔吐,出血,神経マヒ,心不全,昏睡など様々な症状があらわれてきます.

そこで腎臓への負担を最小限におさえ,腎機能障害の進行をできるだけ遅らせるために蛋白質を制限することが必要となります.

私たち日本人は平均して一日80〜90g(体重あたり1.6g)の蛋白質を食べています.しかし、からだの栄養素の構成からみると、標準体重あたり0.8g/kg/日で十分と考えられています。すでに、現代のふつうの食事はかなりの高たんぱく食となっているのです。

そこで、まずはじめは0.8g/kg/日で開始します.(標準体重が50kgの場合40gの蛋白制限となります) .うまく低蛋白食ができるようになった方は0.6g〜0.5/kg/日をおすすめしています。

 なお、取手共同病院の椎貝先生の最近の成績では、0.4g/kg以下の低タンパク食でもその効果は0.6g/kgとほとんど変わらないようです。

2)十分なエネルギーの確保が必要

 食事に含まれているエネルギー量が不足していると,体の中の蛋白質を分解してエネルギーにしようとする作用がおこります.これではせっかく蛋白質制限をしていても体の中の老廃物はどんどんたまる一方です.蛋白質制限が効果的であるためには,糖質や脂質で十分なエネルギーを補給してあげることが大切です.
 エネルギー(カロリー)は多すぎる必要はなく,標準体重を維持できる程度で十分です.たとえば「体重が減っていく,ふらつく,空腹感が強い」ではカロリー不足,「最近,皮下脂肪が増えてきた」ではカロリーのとりすぎが考えられます.体重の変化はカロリーの過不足の目安となります.  

 現在は、標準体重を次のように決めています。身長をメートル換算にし、それを掛け合わせた数字にさらに22をかけます。つまり・・・・

        標準体重=身長(m)×身長×22

          (例)身長1.5mでは、 1.5x1.5x22=49.5(kg)

一日のカロリーは、体重1kgあたりおよそ35キロカロリーが一般的な目

 安ですので、それをかけます。

          (例)49.5 x 35 = 1700 キロカロリー

3)カリウム(K)の制限とは

腎不全では腎臓からのカリウムの排泄が減るため血液の中にカリウムがたまってきます.血液中にたくさんたまると,不整脈や心停止のおそれがあります.

カリウムは細胞の中に多く含まれているため,蛋白質制限をすれば同時にカリウム制限にもなります.そのため腎不全保存期ではことさら制限を必要としない,あるいは軽い制限でよいことがほとんどです.

しかし腎臓病のなかにはカリウムを排泄する働きだけが特に低下しているものがあり,そのような場合では腎機能があまり低下していなくてもカリウムの制限が必要となります.

また,エネルギーが不足しているとカリウムの値が高くなることがあるので十分なエネルギーをとることが必要です.カリウムの制限が必要かどうか,またどの程度制限が必要なのかは主治医に確認して下さい.

4)リンの制限とは

 腎不全では腎臓からのリンの排泄が減るため,高リン血症がおこってきます.

 高リン血症が続くと骨がもろくなったり,溶け出た骨の成分が体のあちこちで沈着して痛みをおこしたり,皮膚がかゆくなったりします。

 リンは蛋白質を含む食品,特に魚介類,肉類,乳製品に多く含まれており,蛋白質制限をすればリン制限もできることが多いのです.

5)塩分制限について

 過剰な塩分は腎臓内の圧を高くし,腎臓に大きな負担を与えます.私たち日本人は世界的にみても食塩を多くとっている国民です.地方によ り差はありますが一日の平均の食塩摂取量は12g程度となっています.

 健康な人でも一日10g以下がよいとされています.

 腎臓病と診断された人は一日5〜7gの制限となります.

 ただし、高血圧があり薬を用いても血圧が下がらない場合やむくみがある場合は,もっと厳しく制限することもあります.

 塩分摂取量の多い人は,まず調味料や漬け物をへらし加工食品もできるだけさけることが必要です.

 調味料や加工食品に含まれる塩分量を覚えたり薄味でも食べられる調理法を工夫して食塩摂取量を減らしましょう.

減塩食をおいしく食べる工夫例 


(a)食塩をひとつの料理に重点的に使いアクセントをつけ,他は薄味 や無塩でも食べられるものを組み合わせると満足感が得られます.


(b)ゆず,レモンなどの絞り汁や酢を利用すると薄味でもおいしく食べられます.


(c)香辛料を上手に使うと塩分の節約になります.


(d)天然のうまみを活用し,みそ汁のだしは昆布,かつおぶし,きのこ類を使うと塩分が少なくてもおいしく食べられます.

(e)減塩食品を利用しましょう.化学調味料は塩分が多いのでさけましょう.

6)水分について

 腎不全保存期では特に水分の制限はありません.

 むしろ水やお茶などを飲んで尿量を一日2000mlくらいに保つようにしましょう.水分をとり尿として排泄することで,体の電解質バランスの調整がしやすくなります.

ただし尿量の少ない人や糖尿病性腎症,あるいは心臓系の疾患がある人は水分の取り方について必ず主治医に確認をして下さい.

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