おくすり千一夜 第百三十四話

 まだ低い 高脂血症境界値!
 
 2001年7月1日の新聞報道によりますと、日本動脈硬化学会は、これまで総コレステロール値220mg/dl以上を高コレステロール血症と定義し、治療の目安にしてきましたが、百二十九話で紹介しました大規模臨床試験「日本脂質介入試験」通称J-LITの結果を踏まえ、これを240mg/dlに改正することになりました。同時に「悪玉」と呼ばれているLDLコレステロールの基準値も20mg引き上げ、適正値120未満を140未満にするそうです。
 我が国ではこれまで、アメリカの基準をそのまま引用しておりました。基本になるフラミンガム研究を再検討したところ、コレステロール値が高いだけでは、循環器疾患のリスクファクターにならないことが明らかになりました。それがJ-LIT臨床試験で日本人で実証されたのです。
 特に筆者にとって感激だったのは、今回公表された総コレステロール値と死亡危険度の関係を示すグラフです。
 百二十九話でこんな指摘を致しました。前回に示された総コレステロールと死亡率のグラフでは、コレステロールの濃度区分が240〜279のところだけ他の区分の倍になっておりました。「これは筆者の推理ですが、240〜259の領域では総死亡率が最小値だったかも知れません。次の260〜279まで範囲を拡げることによって、辛うじて総累積死亡率の最小値を220〜239の領域にすることが出来たように思われます。こんな小細工をしても真実を隠しおおせるものではありません。
 指摘されたコレステロール値の不均一な区分が、均等な間隔に書き換えられておりました。一区画だった240〜279が、今回は二区画になり、予測通り、200から259までの三区画が殆ど同じ値の最低値を示しておりました
 この結果からすれば、適正域を更に20アップして240未満、境界域を240〜259とすべきではないでしょうか。新聞の見出しには、改正された条件でも「高コレステロール患者」半減!とありました。もう20アップしたら数分の一になるでしょう!。
 新基準案によりますと、総コレステロール(mg/dl)は、これまで適正域が200未満だったのが220未満に、境界域200〜219だったのが220〜239に、高コレステロール血症は220以上だったのが、240以上と規定されております。
 また患者の危険因子別の脂質管理目標(案)によりますと、心臓病の既往歴がない場合で糖尿病、高血圧、喫煙、加齢のような危険因子が0または1個では240未満、2または3個で200未満、危険因子が4個または心臓病の経験のある方は180未満が管理目標とされております。なお年齢は男性45歳以上、女性55歳以上とし、糖尿病は危険因子2個に相当するとしております。
 日本人は魚をよく食べるせいか、欧米人に比べ、循環器とくに心臓疾患の危険性は五分の一以下なのです。ですから、コレステロール以外に危険因子がない場合、総コレステロールが280mg/dlより低ければ、薬より食生活に気を付け、肉より魚を食べる程度で十分と考えられます。筆者を含めて、スタチン類を服用し続けてきた患者の皆さん、一病息災が無病息災に変わりました。前途を祝して乾杯しましょう!
 
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